いつものすすきののライブハウスが在る、へたくそなアートグラフィーがある路地裏で
俺らはいつも通りくだらない馬鹿話に花を咲かせていた。
いつも通りだったんだ。アイツが、俺の相棒が居ないという以外は。
その日は何度も携帯に連絡しても出なかった。
心配はしてたがどうせ気まぐれな奴だ。その内、ひょっこりと顔を出すと思ってた。
だが、その溜まり場に現れたのはデカイ蝙蝠みたいな鳥みたいな炎を纏った生き物。(今だから解るが、イフリートだ)
そこに居た誰もが恐怖で動けなくて、イフリートの咆哮と熱波を前に一瞬で吹き飛んだ。俺も例外では無く、いつも暴力を振りかざし、お山の大将を気取って居た糞ガキは宙を舞って……激しく壁に叩きつけられる。
全身がマグマの様な激痛に襲われ、声すらも上げられずぐしゃりとその場に崩れ去った。
なんと無力なことか。
なんと無様なことか。
自分と相棒とのコンビの無類の強さ故に自分を慕い、集っていた仲間がまだ生きていて自分を見ている中で
何も出来ずあの怪物の唯の一手に崩れ、ただただ死に逝くしか出来ないのか。
力があれば
自分に力があれば――――
刹那、自分が闇に囚われた感覚。この世の物とは思えない様な荒ぶる破壊衝動。
自らの身体に漲る純粋なる黒い力。
俺の意識は当に薄れ、代わりの「誰か」が俺の身体を動かしていた。
そのイフリートに殴りかかった所で俺の意識は思い出す事を拒否する。
暗転。
確実にそこにフィルムは存在しているのに、見ることを俺は――
ズキン、と。
右の額の傷が痛む。
恐らくこの時に付いたものであろう事は容易にわかる。
これは聞いた話だ。
助けに来た灼滅者達は流石にダークネス2体を相手には出来ず、まず一般人の救出を優先させた。
その間、二体のダークネスは回りには気も留めずお互いを試すように、戦い合っていたという。
そして、その二匹がボロボロになり疲弊し、アンブレイカブルがイフリートに殴りかかろうとした時、灼滅者達は一斉に二体に襲い掛かった。
ズキン、と。
身体全体が軋み、額の傷も脳みそに直接響く程に痛んだ。
気が付くと、そこは白い空間……病院だった。
勢い良く起き上がると激痛が電撃の様に身体を走り回る。
周りを見渡すと安心して泣き崩れる母親の姿、
奥には見慣れた女性と、その先のベッドにはまだ起きない見慣れた顔が
ナァ、オマエノセイデ オレ コンナコトニナッテルンダケド ?
ガバッ
「ッッッ!!! ……ハァー…ハァー……」
「ッハァー……はぁ……はぁっ……」
「………忘れる訳ねぇ、だろうが……」
「学園に居んのも…灼滅してんのも……お前がやりそうだからだよ…っ…」
「…許されたいなんて…思ってねぇ…ッ…会わせる顔すらねぇッ…!」
「でもよ…早く…目ぇ覚ませよ…」
「………………なぁ…」
「……安心だけさせてくれよ…」
「………ここも悪くねぇもんなんだぜ……」
「……お前も気に入るはずだからよ…」
「…………」
「………らしくねぇな…」
「………」
「……俺ぁ、まだまだ弱いっつーことか…」
「精神的に」
「……精進しなきゃなんねぇな…一から根性叩き直しだ…」
「……お前の分も頑張るからよ…」
「早く目ぇ覚ませよ、馬鹿野郎」
※ツイッターのタグで悪夢がうんたらかんたらってのがあって
調子扱いて過去絡みさせたら思った以上に長くなって涙目。
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